箱根の坂
|
|
箱根の坂
司馬 遼太郎
講談社 刊
発売日 2004-06
価格:¥680(税込)
司馬遼太郎円熟期の名品。 2005-05-17
司馬遼太郎は戦国時代(斉藤道三が主人公の『国盗り物語』)以降の歴史小説に名作が集中している。当然、幕末もの、『坂の上の雲』もそこに含まれている。日本の歴史を戦国時代に突入させた人物は北条早雲。つまりこの作品は司馬文学にとって、名作群の入口に当たる重要なポイントにある。しかし書かれたのは59歳で、『胡蝶の夢』よりも『菜の花の沖』よりも後のことだ。それだけに筆は円熟の境地で、物語は悠然と進む。かといって退屈な箇所は全くない。あえていえば、タイトルが地味なので(なにせ「箱根」だし)、手に取る人が『竜馬がゆく』や『花神』といった作品よりは少ないのかもしれない。司馬氏の胸の中は、歌や詩でいっぱいだったが、この小説ではその要素が満開になっている。特にこの上巻では、歌が重要な役割を演じている。山野の風景を馬上からゆっくりとながめるように、草雲の生涯を味う愉しみ。これは新装版文庫で文字が大きくなっているが、大きすぎるようだ。もう少し微妙に大きくしてくれるくらいがちょうどいい。これだったら当初のバージョンの方が、時代劇の感じがよく出ている。ページの見え方が、物語の性質に合っている。
■続きを読む
この記事は2006/5/30に作成しました。
